東京高等裁判所 昭和53年(ラ)1132号 決定 1979年3月20日
抗告人 東神工業株式会社
右代表者清算人 鈴木利春
主文
原決定を取消す。
本件競落は、これを許さない。
理由
抗告人の抗告の趣旨は、原決定を取消し、更に相当の裁判を求めるというに在り、その理由は別紙記載のとおりである。そこで抗告の理由について案ずるに、本件競売事件記録によれば、原審競売裁判所は、債権者京浜信用組合の申立によって開始された、原決定別紙記載の二棟の建物に設定された根抵当権実行のための競売手続として、昭和五三年九月一六日付を以って競売期日を同年一〇月三〇日午後一時、競落期日を同年一一月二日午後一時と定めた競売期日及び競落期日の公告をし、同年一一月二日午後一時の競落期日に原決定の言渡をしたことが明らかであるが、抗告人提出の、抗告人が原審競売裁判所から郵送を受けた、昭和五三年九月一六日付の不動産競売期日通知書と題する書面の記載によれば、右書面に印刷されている競売期日欄の年月日の部分は空白のままであって、なにも記載されていなかったことが認められるので、右書面によっては、原審競売裁判所が本件競売手続の利害関係人である抗告人に対して前示競売期日の通知をしたものと認めることはできず、ほかに記録を精査しても、原決定のなされる前に、抗告人に対して右通知がなされたものと認めることはできない。これは競売法第二七条二項の規定に違背するものであり、競売法による根抵当権実行のための競売手続においては、利害関係人に対する競売期日の通知を欠く以上、競売期日を開いて競落許可決定を言渡すことはできないものと解するのが相当であるから、原決定は競売手続を続行すべからざる事由あるに拘らず、これに違背してなされた違法なものといわざるを得ない。従って原決定は取消を免れず、本件競落は許すべきではなく、原審競売裁判所は更に競売期日を定めて手続を続行すべきである。よって競売法第三二条二項により民訴法第六八二条三項、第六七四条一項、第六七二条第一号後段を準用して主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 西村宏一 裁判官 宮崎富哉 高野耕一)
<以下省略>